「十三人の刺客」2010/10/07 15:05

 冒頭の切腹シーンの、痛そうなこと。肉が裂け血が吹く音だけで痛い。
 1963年の同名映画を、三池崇史監督がリメイク。
 実は観る前はあんまり期待していなかったんですよねえ。なにせ13人対300人って戦力差があまりに嘘臭い(オリジナルでは五十数人相手だったのに)。勝てるわけあれへん。この人数差を補うために、役所広司演じる島田新左衛門たちは宿場を丸ごと買い取って要塞化。色々仕掛けをつくって罠を張り、敵を分断させて標的を狙うのですが、あと少しのところ、と思ってもやっぱり数で押されてしまう。
 味方の13人、全員のキャラを描ききれないので、半分くらいは誰が誰だかよく分からないうちに壮絶に戦死しちゃいます。一部の人だけ筆書き(これがなかなか格好良い)の字幕で姓名と役職の紹介してたんで、全員分を期待したんですけどねえ。
 標的は将軍の弟にして明石藩の藩主。放尿シーンで登場した、稲垣五郎演じるこの殿様は残酷というより、狂気。全ての言動がいちいちイカレテいて目が離せません。これがヘタに権力もっているもんだから非道の限りを尽くす。明石藩の人たちだってみんな「この殿様アカンやろ」と思ってるはずなんですが、将軍の弟が藩主っていうのは、藩にとって有益になることもあるようで。
 この殿様をお守りする鬼頭半兵衛(市村正親)が、役所広司と同門だったという因縁。かたや「天下万民のために暴君を打つ」かたや「君主に従い守るのが武士の道」と、言っていることは普通にキレイゴトなのですが、なんとなく、「侍のケンカ」をやってみたかったってのもあるような気がします、この作品。
 天下泰平の世に飽いていた侍の一人が、島田の甥っ子の新六郎(山田孝之)。「いるような、いないような」自分のことをそんな風に言う彼が、「大博打」のあとの累々たる屍の中を歩いて、ニヤリっと笑う。なんというか、自分が殺される時に「今日が生きていて一番楽しかった」と言った殿様に通じるところがあります。
 そんな侍たちに対するアンチテーゼが、山の民・小弥太。大河ドラマでメチャメチャ格好良い高杉晋作を演じている伊勢谷友介が、スクリーンでも自由気ままな野生児を好演しているのですが。ちょっと、自由すぎるやろ。欲望のままに生きる姿は天晴れなんですが、これも極端だなあ。
 誇張が激しいと思うところはありますが、武家の女は本当に眉を剃っているし蝋燭の明かりの薄暗さとか、はリアリティを演出しますし、血の涙を流して書く「みなごろし」とか鬼気迫る死にっぷりも良かったです。台詞も戦闘シーンも格好良いので飽きずに楽しめる映画です。

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