「まだ人間じゃない」2013/04/07 22:35

 三月に終了したTVアニメ、「PSYCHO-PASS」。
 これがすごく面白くて、毎週楽しみにしていました。「最終回に新メンバーも加入してきたし続編も作ってくれないか」とも思うし、「あれだけキレイに最終回纏めたんやから下手に続きやるよりここで終わってほしい」とも思うし。
 アニメの中で、ある登場人物がF.K.ディックについてちらっと触れているところがあったのですが、「なるほどなあ」と、思いました。
 言われてみれば、世界観や話の運びが、ディックのSF作品っぽい。
 そんなわけで、ディックの短編集を図書館で借りて読んでみました。長編も面白そうなのあるんですが、電車読書すると思うと、短編の方が手に取りやすくて。
 この短編集には作者本人の作品解説がついているのですが、「Aがあり、それに対立するBを描く。そこからさらに反転させて、しかし元のAとは異なるA´が生まれる」ってな感じのことが語られています。
 表題作の「まだ人間じゃない」を見てみると、これは「十二歳以下の子供はまだ人間としての魂が備わっていないから犬猫や胎児と同じように保護者が不要と認めたら処分してしまえる(生後堕胎)」という最低な社会状況が描かれています。人口増加を抑えるための政策ってことです。
「そんなの弱い存在を虐げるひどい話だ」と良識ある大人が抵抗しようとするのですが。
 しかし実際のところ、子供だけじゃなく大の大人だって、魂があるのかないのかなんてはっきりしないしそんなに自由でもないし安心安定が保証されているわけじゃないんだ。と、いう虚しさがそこかしこに漂っている作品でした。
 ある特殊な状況を用意することで、そこで人々が何を思いどう動くかを描く作品。

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