「潤一郎訳 源氏物語」2018/11/23 11:53

イケメンは何でも許される、というお話。ただし、あまりの気高さ美しさに涙が落ちるほどのレベル(笑)。
中公文庫で全五巻。しかし思ったよりも難しくて、なかなか読み進められない。谷崎のが原文イメージに忠実って聞いたけど、やっぱり晶子か寂聴か田辺版あたりにしとけばよかったかなあ。和歌とか宮廷文化の記述は注釈あっても難しい(興味深くはあるけど)。
はかばかしく読み進められなかったもう一つの理由が、「光源氏コイツむかつくなー」。賢木の雨夜の品定めなんて、どいつもこいつも自分のこと棚に上げて言いたい放題。しかし、理想の女性を求める色好みは止まらない。
嫌がる人妻にしつこく言い寄り(空蝉)、連れ出した身分低い女が変死すると知らん顔でごまかし(夕顔)、お友達が探していると知っているのに教えず(夕顔・玉鬘)、少女を誘拐し(若紫)、父親の后と密通し(藤壷)、お兄さんの彼女にもちょっかい掛け(朧月夜)、田舎で謹慎中にも女を作り子を作り(明石)……。たくさんの女たちについて、その後についてもちょくちょくフォローを入れてくるあたり、作者と言うか編集者が神経を使っている感じ。
色々やらかしながらも、如才なく世渡りやって栄華を極め。そんなウキウキ人生で、ままならないことが三つ。六条御息所の怨と、北の方を寝取られたこと、そして最愛の人に先立たれたこと。……一番の盛り上がりが、若菜上下だねえ。
対する朱雀お兄さんが気の毒なポジションで、朧月夜にも秋好中宮のケースも煮え湯を飲まされ、紫上や柏木君の危篤と重なって五十歳の記念行事はオザナリになって、可愛がっていた女三宮も若くして出家する羽目になり。
そして、その貧乏籤体質は、お孫さんの薫君に受け継がれてしまった!彼の恋路を阻むのが、光君のお孫さんであるプレイボーイ匂宮!
宇治は「憂し」に通じる。片道六時間の遠距離、三角関係四角関係。宮廷や政治からは離れ気味に、宇治十帖は普通に恋愛小説みたいで面白かったです。