「女王陛下のお気に入り」2019/03/02 00:25

THE FAVOURITE
幼馴染で耳が痛いことも気安くポンポン言ってくれる賢い人と。
こちらの気持ちを汲んで調子よく合わせてくれる楽しい人と。
友達(あるいは恋人)にするなら、どちら?冷静に考えれば前者だけれど、身体に病を心に孤独を抱えた人ならば……
スペイン継承戦争中(1701~13)のイングランドが舞台、でもどの辺までが史実なのか。
ユリ映画、主人公はそれぞれ個性的な女三人。「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンやオスカー女優のレイチェル・ワイズを支配したり支配されたりする、アン女王。このキャラが一番不安定で複雑で悪い意味で人間的で、オリヴィア・コールマンがアカデミー主演女優賞。
豪華な宮殿(実物)、衣装、うさぎちゃんたち。いずれも、醜くグロテスクに映し出されてしまうマジック。男たちは滑稽に浮かれるピエロ。女たちは愛と快楽と地位と権力を掴むために冷徹に動く。
最初は、没落貴族娘が使用人から「女王のお気に入り」へのし上がって行くのに感情移入していくけれど。使用人でも心はレディ!と言っていたのに、結局のところ……
人間関係、感情の変化は面白いけれど、後味悪いお話。

「インフェルノ」2019/03/11 10:50

土曜プレミアム。
大変有名になった「ダヴィンチ・コード」は期待値が高くなりすぎて(そしてネタバレがすぎて)いまいちに感じたものですが。
ラングドン博士の「世界の観光名所ミステリ」シリーズ。イスタンブールもいいなあ。
薬打たれて記憶障害な博士が記憶を取り戻しつつ、謎を解読。博士、抜け道に詳しすぎ。
誰が敵か、味方か。物語は二転三転していくけどちょっと構成が複雑で分かりにくかったかなあ(関係勢力が多くって)。
映像的には世界の観光名所の煌びやかさよりも、博士の幻視による地獄世界の方がホラーっぽくて印象的。

「アラン・ドロンのゾロ」2019/03/13 10:47

1974年、伊・仏。ラテンの香りむんむん。
南米植民地の総督として赴任するはずだった友人が謀殺され、現地の悪者と対峙することを決意した主人公。
という導入はシリアスで、あとはドタバタアクションヒーロー活劇。気弱で愚鈍な男を演じつつ、裏では黒覆面黒帽子黒マント黒い馬、の民衆の味方・ゾロとして暗躍する。賢くて格好良い黒ワンコがステキ(アラン・ドロンより!?)。
不正を働く奴らを懲らしめて人々が喝采を送る。同じ勧善懲悪でも、水戸黄門みたいなお上品なのでなく、なんか南米っぽい陽気さを楽しむ映画。
クライマックスは意外にもラスボスとの一対一の勝負で、権力者が大勢の部下を差し向けるパターンでもない。王道の対決シーンだ、敵が相当な剣術の使い手であることは序盤から示されていたので、黒と白のチャンバラアクションに気合が入る。
こういう、難しいこと無しのシンプルなヒーローものも、たまにはいいなあ。

京の冬の旅、雪梅雄鶏図2019/03/15 00:37

花の色は潜む雪梅雄鶏図
ぱっと見赤い椿(山茶花?)の絵だけれど、枝に積もる雪に同化するように、白梅。寒い冬の日でありながらも、春の兆しが隠れている。赤い鶏冠を頂いて地を踏みしめるおんどりと、細い枝先で飛び立つ時を待つ鶯の対比もまた一興。
緊張感あふれる構図、題材。これが冬から春先にかけて床の間にあるって最高。
今年で53回目の、「京の冬の旅」。何年か前には一日に何か所も回ったりしたけれど、昨年は東寺の五重塔のみ、そして今年は、伊藤若冲の鶏だ。以前滋賀県まで鯨と象を見に行った時には職場で「誰それ」って言われちゃった若冲だけど、もうすっかり有名。特に今回の特別展示作品は、めちゃめちゃ格好良かった。
建仁寺の塔頭、両足院。他に、長谷川等伯の屏風図等。美しく整ったお庭に、毘沙門堂(像は見えなかった)前の狛犬ならぬ狛虎もカワイイ。
ただ、残念だったのが、ご朱印がショボかったこと。直接ご朱印帳に記載せずにあらかじめ書いてあるのを張り付けるタイプだけど、参拝日付も入ってないし、筆に慣れてない人がなんか取りあえず書いておいて販売しとこうって感じ。厳しく雄渾な若冲を見た後だと余計に手抜き感。
白い封筒に入れて渡される時、ちゃんと中身確認しなきゃいけないのだなあ。京の都は案外はんなりはしておらず、浪速のアキンドよりもシビアな商魂をお持ちなのだ。
こんなん言うのはクレーマーっぽいかもしれないけど、「これでもみんな喜んで満足するもんだ」という誤解が広まるのもつまらない。

「眠る村」2019/03/17 23:06

ナレーターというより、「役者」な仲代達矢。この情感の込め方は賛否分かれるかもしれない。
事実に基づく。という作品には興味を覚える方だけれど、ちゃんとしたノンフィクション小説やドキュメンタリー映画はなかなか手が出ない。やっぱり固くて真面目すぎて、面白みがない気がしてしまうのだろう。
東海テレビドキュメンタリー劇場第11弾。いわゆる「名張毒ぶどう酒事件」は、これまでも何度か取り上げられてきて、今回がおそらくその集大成っていうか完結版っていうか。
肺炎で亡くなった奥西死刑囚の無実を示す手がかりは、出てこない。ただ、彼が犯人であるという物証や証言や自白の信ぴょう性の無さだけが、次々と提示される。事件から半世紀以上たち、集大成にしてこのスッキリしない感じである。
亡くなった死刑囚の妹さん88才が、曲がった腰をさらに折って頭を下げ、再審請求は今でも続いているのですが。
待っている。この妹さんが亡くなるのを。本当に終わってしまうことを。待っている人たちがいる。
名張、よりも、葛尾という地名の方が頻繁に出てくる。小さな集落で起こった大きな事件は、ミス・マープルも金田一も登場することなく終わることを待たれている。
もしも本当に、奥西死刑囚が無実であったならば、警察・司法が困る。権威的に。葛尾の人々も困る。村の中の誰かが真犯人だということは負担なのだ。心理的に。
終わらせまいとする人たちと。
眠らせたまま終わってほしい人たち。

「PSYCHO-PASS SS Case2,Case3」2019/03/23 00:54

劇場版製作を知った時から予想はしていたけど、思ったより早くTVシリーズ第3期が始まる。嬉しい。
でも主人公が新キャラに代わってしまう。不安だ。
脚本は誰が担当になるんだろう。

やっぱり、脚本大事。Sinners of the Systemシリーズ、Case1に比べると2,3の方がずっとまとまっていて。
「First Guardian」は須郷さんがTVシリーズ二期に続いて強烈な精神的ダメージを食らわされる気の毒なお話しがメインで、そんな酷い目に合いながらも新たな己の道を真面目に進んでいく須郷さん、ハイスペックで人柄も良い、幸せになってほしい。けど不幸が似合う人なんだなあ。
過去編なので、お亡くなりになった方々も含めて一期キャラ登場が嬉しい。軽いあんちゃんな石田彰さん、神経質なメガネさん、猟犬時代のコウちゃん。
で、何と言っても、とっつあんの渋さ、強さ、弱さ、熱さが……。公開直前というタイミングで有本欽隆さんの訃報。悲しいことですが、このカッコよさが遺作っていうのは役者冥利かもしれない。
「恩讐の彼方に―」で傭兵コウちゃん。舞台はチベット!アジアの風物映像は素晴らしかったけど、最後の戦闘シーン以外は全くSF感無い!
しかも、一話限りのゲストにするにはもったいないくらいの美少女登場。「約束のネバーランド」で主演やっている、旬の人キャステイング。
さらに、有能巨乳お姉さん、外務省職員戦闘能力高すぎ、コウちゃんとの会話も知的。
美少女と美女と同居して仲良く夕餉をいただく、コウちゃん勝ち組。
ところが、彼の中は空虚だった。復讐を果たしたかわりに、全てを失った。やるべきことも帰る場所もなく、「やりたいことだけをやる」
そんな彼が、復讐から四年以上も掛けて、ようやく、踏み出す。

第91回センバツ、開会式2019/03/24 09:47

開会式の少し前に球場にたどり着きましたが、内野席は完売、アルプスもすぐにチケット無くなったことでしょう。
開会式感想を箇条書き。
・火薬で校名幕下ろす演出好き。
・平成を代表する2曲、のはずなのに、明らかに「世界に一つだけの花」ばかりが聞こえてきて、久しぶりの「どんなときも」は端に追いやられた感じ。ピエール効果……
・司会アナウンスや国家独唱とか、みんなプロ顔負けに上手い。TV放送も、アナウンサーの声だけ消去して生開会式風にできないかなあ。
・毎度のことだけど偉い人のあいさつ長い。平成最後言い過ぎ。冷えるんだから手短にすませて選手にアップさせてあげてよ。
・柴山文部大臣は普通に体育会系の人か。スピーチの口調と言い、始球式のナイス投げっぷりと言い。

第91回センバツ、開幕、好投手たち2019/03/24 09:48

開幕試合は市立対決。軍港ブルーの呉と蜜柑カラーの市立和歌山、どちらもアルプス満員で、軟投派投手が先発。
似たようなイメージの両チームで、でも戦力的には呉の方が小粒な感じで事実七回二死まで無安打。九回はスクイズ失敗で終わったかに見えて。ところがああいうクロスプレーの走塁練習をしていたようで、その成果。タッチを避けて同点。接戦に持ち込んで2安打で2点粘りの戦い。
市立和歌山は終盤投手交代もあるかと思ったけど、結局被完投させて、延長11回3-2サヨナラ。1~3番打者の勝負強さが光った。和歌山県勢センバツ100勝目。

第二試合の伝統校対決は高松商が8-0で快勝。三年前準優勝時の、勢いあるノビノビ打線が今年も見られて嬉しい。香川投手(高松で香川君って、覚えやすい)被安打4完封でタイムリーも打って。
お久しぶりにセンバツ登場の春日部共栄は、序盤走りを封じられて攻撃乗れなかった感じ。

第三試合は一回戦屈指の注目の対決。お客さん大入り。
冷たい風吹き雲が日を遮って4時過ぎには照明が入るほどの寒い中、ゲームを熱くしたのは奥川投手の初回からの150キロ越え。剛速球と変化球を交えて三振の山、四死球もほとんどない。三期連続出場の星陵は昨夏の劇的な敗戦が記憶に新しいけど、その時のメンバーも多く残っていて、聖地で雪辱。
3-0で敗れた履正社は大阪が誇る二強の一角でありながら、点差以上に完敗。エースに負傷があったって話で、実際あんまり球速出てなかったけど、それを差し引いても、安打三本では勝てないなあ。
格上投手が相手の場合、力まかせだけじゃなくって、何とか揺さぶって隙をつく、工夫がいるものだと思わされた試合でした。

第91回センバツ、二日目、伝統と新鋭2019/03/24 23:13


第一試合 習志野8-2日章学園
初回の先制パンチで決まってしまった。ていうか、習志野ブラバンの上手くて威圧的なのズルい。
春初出場の日章学園は浮足立ったのか、エラーも多くて、立て直せず。

第二試合 明豊13-5横浜
第一試合の仇とばかりに、関東の名門校に大差をつけた九州勢。
新しい学校に特有の「学生合唱コンクールの課題曲」と言われても違和感ない校歌で有名な、別府大付属明豊。
対する横浜も、今風に共学化するそうで、あの黒い男子校アルプスに女子生徒が入ってくると思うとなんか可笑しい。
序盤にぽぽんと4点先制してこのまま横浜ペースで行くかと思ったら、明豊打線爆発して横浜投手陣を次々攻略、大量得点。……監督さん智弁和歌山出身というのが納得の、攻撃力の磨かれ方。
横浜の及川投手は前日の奥川投手と並んで球速150超の注目選手だったのに、球速も制球もイマイチで。その真価は、夏におあずけ。

第三試合 札幌大谷4-1米子東
なんて対照的な両チーム。
札幌大谷は創部10年目(女子高が共学化して野球部創部パターン)、センバツ初出場。しかし秋の神宮大会で初出場初優勝、あの星陵に競り勝ってタイトル取った、まぎれもない全国レベルの実力。
米子東は1900年創部の県立校、過去には春準優勝の実績あり。そんな伝統校も、センバツ出場は23年ぶり、部員16名って選手全員ベンチ入りできる規模。平成最後どころかむしろ昭和の香りする感じですが、それでも中国大会を接戦で勝ち抜いて準優勝、堂々の甲子園復活なのです。
札幌大谷は初回先頭打者本塁打、追いつかれてもすぐに突き放して優位に試合を進める。
米子東は、森下投手が中盤以降打たれながらもしぶとく持ちこたえて0を並べただけに、そして四死球で結構出塁はしていただけに、タイムリーを打てなかったのが残念だったなあ。

第91回センバツ、八日目、劣勢2019/03/30 23:29

エイプリル・フール発表を前にして、新元号予想イベントがチラホラあるそうです。軽いお遊び感覚ですが、使用漢字の一番人気が「安」だというのが興味深い。安心・安定・安全、多くの人たちが安らぎを求めている。
自分もそのお遊びに乗ってみるなら、「優」を使いたい。「光優」とか。優しい光、優れた光の時代になりますように。しかし採用確率はとても低いと思われる。この字は画数が多くて書きにくいうえに、ニンベンに「憂い」って、あまりオメデタクありません。
優しい人は憂う人、優れた人は憂う人。そう思と辛く苦しい。安らぎには程遠い。
でも、辛くて苦しいその先に手を伸ばし、掴めるモノもある。
球児たちは今日も「優勝」目指して駆けてゆく。

第一試合
楽しみにしていた二回戦注目カードは、序盤から差がついた。一回戦で光星を三安打完封した広陵・河野投手、今日は三回6失点で降板、二番手投手も七回に捕まった。打っても守っても上手くいかず、劣勢を立て直せない、一昨年の夏の決勝をほうふつとさせる。
東邦はボール球を振らず四球で好機を広げ、積極的に走り(投手でも盗塁)、本塁打も出て二桁安打12得点。失点2は終盤点差がついて選手交代したあとのもの。

第二試合
両チームとも序盤守備が不安定。しかし明石商は犠打を絡めてもらったチャンスに畳み掛けることができて、大分は拙攻だった。その後も、打つ手がことごとく不発だったり裏目に出たりで、積極的に攻める姿勢はキライじゃないんだけど歯がゆい。
13-4で快勝の明石商、選手も温存して明日の準決勝に。

第三試合
雨が強まり、吐く息が白い。長い試合中断に、チームの戦力差。いつ大崩れしてもおかしくないと思ったら。
初出場の啓新は、ねばった。15安打も打たれて、5失点に抑えた、踏ん張った。連打が出ないまま迎えた最終回の攻撃で、選手たちはまだまだ声が出て表情も明るい。強豪校に一矢報いて、彼らは胸を張って福井に帰ることでしょう。
5-2。悪コンディションの試合でエース完投の智弁和歌山は、準々決勝の明石商戦は近畿大会のリベンジなるか。


春はあっという間。一週間前開幕したと思ったらもう八強がそろう。
和歌山がオイシイ、智弁と市立、私立公立両方のチームが八強に勝ち残り、目指せ決勝対決。監督さんが智弁和歌山出身の大分・明豊も勝ち上がって(秋の優勝校に競り勝って!)、和歌山の高校野球ファン楽しいなあ。
九州勢では他に、福岡・築陽学園がセンバツ初出場校で唯一八強進出。
老舗常連組では龍谷大平安、そして平成最初の優勝校、愛知・東邦が平成最後の大会もテッペンを狙う。
公立校は市立和歌山の他に、地元兵庫の明石商と、美爆音にご近所苦情があったりサイン盗み疑惑があったりの習志野。
近畿4、九州2、東海1、関東1。春は投手力なのか、今年は打撃戦といえる試合がまだないのだけど明日の準々決勝はどうだろう。