二条城、眺める2019/05/01 23:57

令和元年五月一日の書付(ご朱印の代わりになるもの、とか説明されていたけど)求めて長蛇の列。こうなることは容易に予想できたであろう、あらかじめこの日付でたくさん印刷しておけば良いものを、一時間待ちって。
そしてネットで高額転売されるのかなあ。

新緑のうつる世長雨二条城
うちの甥っ子くらいの子供に、大政奉還の説明をしている親御さん。
即位おめでとう記念でこの日のみ入城無料。二条城初めてですが、時代劇みたいでワクワク、さすがに格好良い。数年前に修復工事を終えた唐門の豪華さ。
美しい二の丸庭園はできれば二の丸御殿からの眺めも拝見したかったけれども、文化財保護のため(障壁画は複製だけど、それ以外にも色々あるのだろう)ピッチリ障子が閉てられている。
本丸御殿が解体修復中なので、数年後にそれが完成してからまた行きたいなあ。できれば、お天気の良い日に。

「アガサ・クリスティー ねじれた家」2019/05/01 23:58

クリスティー原作映画は毎年のように上映されていて気にはなるもののなかなか観に行くことはできませんでしたが、多分これは、読んだことない作品。
前日読んだ京極夏彦もそうですが、この手のモノは登場人物が多く、それぞれから証言を得ていくその過程が、かったるい。主人公がポワロみたいなイロモノじゃなくて割と普通な(つまり薄味な)人なのでなおさら。
そして結末は、「魍魎」以上に後味悪い。ここでおしまいなん!!!
それまでの調査の結果から探偵役が華麗に推理を披露するんじゃなくて、最後まで流されっぱなしだったなあ。
毒殺された大富豪一族の、心のねじれに。

サン=サーンス チェロ協奏曲第1番イ短調2019/05/02 22:34

寝屋川市立、アルカスホールへ。
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」と「プラハ」、以前も聴きに行ったことあるけど、どうしても心地よすぎて眠たくなる。
しかし、本日のお目当ては、チェロ。近藤さんのチェロコンチェルトは初めてで、とても楽しみにしていた。サン=サーンスはモーツァルトより100年ほど後、19世紀後半から20世紀にかけて活躍したフランスの人。知らない曲だったけど、期待に違わぬ格好良い演奏。こういう、ぐうっと音楽世界に引き込む力って、どうやって生み出すのだろう……
アンコールはカザルフ編曲のカタルーニャ民謡。CDに入っている「鳥の歌」とは演奏の印象がだいぶ違ったなあ。

「満願」2019/05/05 23:36

ミステリ連休になってしまった、三作目は米澤穂信(78年生まれ、同世代なんだ)の短編集。この人も、シニカルな哀愁を描く作風だ。収録作品の初出は2010から2013だけど、発表順に並んでいないのは何の意味があるのかしら。
六篇のうち「万灯」が印象深い。アジアの資源開発と日本の古い民間信仰を繋ぐイメージ、日本のミステリとしては珍しい切り口じゃないだろうか。視点の遠近に、著者の「さよなら妖精」をちょっと思い出す。
メインタイトルになった「満願」も面白い。トリックや犯人探しより動機探しをテーマにすると、重要なのが犯人の人物描写。そういうのが上手い作家さんだ。
求めるモノは、人それぞれ。密かな願いを叶えようとするその数だけ、ミステリが生まれる。

「魔女の宅急便」2019/05/06 22:55

子供のころ、第1巻だけ読んだことがある。今回は全6巻角川の文庫シリーズで読んだけど、前の黄色い表紙の方が好き。
有名アニメ映画の、落ち込むこともあるけれど私は元気ですってフレーズが、本当にピッタリくる。基本的には、魔女っ娘キキちゃんの活躍を描くのだけど、実は、主題は、もっと広くて深い。
空を飛べて親元を離れて学校にも行かず、という特殊条件でありながら、思春期の女の子の、ウキウキやモヤモヤがあるのです。しばしば、自分の立ち位置を見失って不安になって己自身に振り回されている。では、そこからどうやって、立て直すか。
最終巻では、キキの二人の子供たちが主役になって、それぞれの向かう道を見つけていく。世界の何かに導かれていく、不思議。
角野栄子が描く魔法って、そういうものなんだろうな。

河鍋暁斎の視線2019/05/11 23:59

駅からのびる傾斜。ずっと下っていくと、白い石造りの建築物の上に、派手なカエル。
海光る蔦緑色ミュージアム

暁斎の妖怪画は一度見てみたいと思っていたので、初の兵庫県立美術館。
作品の大半が淡い色彩で、墨絵か、それに薄く着色しているくらいの印象。だからかな、色鮮やかな江戸時代の浮世絵作品に比べて地味な感じがしてしまうのは。
でも、目がイイ。ただの黒丸が、ちゃんと「見ている」と思わせる。それは実体のあるもの(カラスの見る柿とか)でも、対象物がはっきりしない虚空(鯉の見上げる滝の上とか)でも。描かれているキャラクターたちに何らかの意志(つまりは、作者の意図)を感じてしまう。
と、思っていたら、「盲人百態図巻」では絵巻に続々と「見えない」人物が描かれている。見えないのにお裁縫して(!)、碁を打ったり(盤はあるのに石は無い)、お酌をするのに派手にこぼしていたり(やっぱり!)、骨董市で掛け軸を眺めていたり(え!?)。モノを観察して写し取る画業の人が、盲人の様子に着目するのだなあ。
見るっていうのは、目に映ることばかりでも、ないからね。
展示作品のほとんどが河鍋暁斎記念美術館(埼玉県)所蔵ですが、もっともゾクゾクきたのが生首咥えた幽霊(福岡市立博物館)で、明治三年、戊辰戦争の記憶もナマナマしく、「筆禍事件」でブタバコ入りした年の制作って思うと、幽霊の視線の先には何があるのか、何も見ていないのか、凄い不気味。
それから、水面に顔だけのぞかせた眠龍図(霊雲寺所蔵)。静かな絵なのに、迫力がある。龍はこれから再び水底に潜るのか、それとも飛び立つ時期をうかがっているのか、その眼が何を見つめて何を思うのか、気になる。
この2点、残念ながら絵葉書販売していなくて、代わりに、チケットにも描かれた「美女の袖を引く髑髏たち」と、「柳の木にとまるカラス」を購入。暁斎と親交のあったドイツ人医師が持ち返った作品の来日ってことで、今回の暁斎没後130年展の目玉。
カラスも髑髏も、とぼけたヒョウキンさがあるのに、全体を見ると、やっぱり、どこかが、凄みがある。役人風刺で目をつけられた「筆禍事件」の前までは、狂斎を名乗っていた。滑稽さと不気味さの相互作用がじわじわくる。

「多十郎殉愛記」2019/05/17 23:09

主演が高良健吾くんでチャンバラメインの作品。ということで観に行った映画。
チャンバラと言っても、華麗な動きで鮮やかに切り倒す、ショーっぽいアクションではなくて、けっこう泥臭い。剣の達人設定とはいえ、ずっとニート生活で稽古もなんもやってない主人公なので、ぜいぜい息を切らしているほうがリアルではありますが。
ちょっと、盛り上げを効果音に頼りすぎる印象。
中島貞夫監督・脚本による人物描写には、何か、迫るものがありました。ある意味古い、パターン通りともいえるのだけど。
夢も希望もヤル気も無い男が絵筆をとって故郷の夏蜜柑を描いていたりしてモラトリアムな若者だ。おとよさんはしっかり者なのに情が厚すぎて惚れた男からの「頼れるのはお前だけ」という殺し文句に血迷う。多十郎の弟くんは甘ちゃん全開に都会に憧れて上京(京都)し、「お国のため」という流行にノリノリで。……時代は幕末なんだけど、容易に現代社会に変換できてしまうよ。
そして異様に雰囲気あったのが、役名も付いてないようなオッサンで。パンフレットによるとその昔「新選組血風録」で土方やってらした役者さんで、メッチャ納得。終盤にこんな渋い人登場させてしまったら若いメインキャストたちが相対的に軽くなっちゃって困るよ。