「Fukushima 50」2020/03/13 00:03

正真正銘の危機。東日本壊滅の可能性。
福島第一原子力発電所は、正に戦場だった。大地震からの津波で、非常電源ストップ(地下の電源が大水でダメになるって、関空でもあったなあ)。中央制御室には窓が無いらしく、真っ暗な中でライトの明かりを頼りに作業する。防護服にテープグルグル巻いて酸素ボンベ背負って決死隊。そのさなかにも余震でグラグラするのだ。
現場の臨場感がスゴイ。状況確認するために計器類だけでも復活させようと車のバッテリー提供(たぶん、職員の自家用車の)があったり、水が無いので男子トイレが酷い状況になっていたりとか、不眠不休で疲れ切った感じとか、恐怖と絶望とか。ワケの分からぬまま自宅から避難していく大量の地元住民の皆様の様子もちゃんと描き出される。
主役を張った佐藤浩市に渡辺謙、二大俳優はさすがの存在感。他には、火野正平の安心感頼もしさが光っていました。
たった九年前のことで、結果がどうなるかも現場で殉職が出なかったことも知った上での鑑賞で、それでも緊迫した空気がヒシヒシ伝わる、実録もの映画として一級品。
ところが、残念なのが、終盤は人情ものになってしまったこと。
大きな危機に立ち向かう、「シン・ゴジラ」では主要メンバーの家族の様子とかほとんど無くて物足りないような気がしましたが、今考えると、それが正解だったのでしょう。キャラクターの個人の事情があんまり前面に出されると、緊張感が削がれる。
ただ、フクイチの場合は、最後に盛り上げる手段が他に見当たらなかったのかもしれない。原発の皆さんは頑張ってその時出来る最善を尽くしたけど、打つ手がなくなってしまう。絶望ムードの中、どういうわけかよく分かんないけど色々幸運が重なったおかげで最悪の事態を回避できました、というのが本当のところなのだ。
復興庁が協力していることだから、不穏な感じで終わらせられなかったのかもしれないけど、ギリギリの綱渡りは、実は今でも続いているのだ。