「スパイの妻」2020/11/01 22:37

<劇場版>、とわざわざ注釈ついているのは、TV版や配信版もあるってことかな。NHKの高精細8Kカメラ撮影。
昭和四十年前後の、裕福なご家庭の住居、調度、衣装。山田洋次監督の「小さいおうち」でも思ったけど、自分この時代のデザインの可愛さ美しさにくらくらしてしまう。
こうして画面にくぎ付けにされた上に、ストーリーも時代劇サスペンスにして、夫婦の愛情物語でもあり、各登場人物の人生哲学の表れでもある。
主要登場人物は蒼井優、高橋一生、東出昌正の三人に絞られるのですが、三人とも完璧。特に主演女優の、物語展開によってくるくると変わる表情。はじめは無邪気な少女のような若奥さんだったのが、嫉妬、猜疑、冷徹な計算、高揚、不安、驚愕、どれも説得力ある。
黒沢清監督の、第77回ヴェネチア銀獅子賞受賞作品。この監督の実力と、そのお弟子さんである二人の脚本の素晴らしさ。
不正義の上に成り立つ幸福で君は満足か
わたしは正義よりも幸福をとります
この時代の宿命で、心躍る可愛らしいすべては、戦火に包まれる。
それぞれにとっての正義と、幸福を、掴むことができたのでしょうか。