「華氏451℃」2021/10/03 21:45

FAHRENHEIT 451
それは、本が自然発火する温度。1953年レイ・ブラッドベリ作の幻想的SF小説は、文章がフワフワと詩的で非常に読みづらかったのですが、「色と光と駄弁の放送局」っていう表現はちょっと笑ってしまった。
愚にもつかないTVとラジオが人々を取り巻く世界では、書物の所持が禁じられている。主人公・モンタークは焚書官でありながら、そんな社会に疑問を抱き、徐々に言動が不穏で支離滅裂になっていく。だいぶ病んでいるとしか思えない。
面白いのは、彼の上司が、本を焼く仕事しているくせにたいそうな読書家なこと。この人が理路整然と、本=知性を得ることの有害性を説いてくる。そんなものは人々を苦しめるばかりだという、これって反知性主義ってやつでしょうか。
楽しく中身のないTVに夢中になっていても、主人公の奥さんは大量の睡眠薬を飲む。
そして戦火に呑まれる。
破壊する火から、温める火へ。
それだけで、本には有益性があるはず。