「サマルカンド年代記」2015/03/16 00:20

 オマル・ハイヤーム。セルジューク・トルコ時代の詩人、数学者、天文学者。酒と人生と世界の美を愛した、イスラム史上屈指の文化人。
 アラムートの暗殺教団。まるでラノベの設定みたいなんですが、実在したイスラム教シーアの一派で、その名の通り、自分たちと対立する者たちに刺客を差し向けて抹殺した恐怖の軍団。・・・・それでも、爆発物の無い時代なので犠牲になるのは特定のターゲットのみで、現代の無差別テロに比べればまだ節度がある方だと思ってしまうんですが。
モンゴル軍によって降伏させられるまで独特の地位を築いていたと、高校のとき授業で聞いた覚えがあります。TVアニメにもなった「Fate/Zero」に出てきたイスラムっぽいのがゾロゾロいる暗殺者集団の元ネタ。
 その教団の創始者・ハサンと、前述のオマルさんが若い頃お友達同士だった、という設定。11世紀イスラム世界の、光と影を描いたのが第一部。
 第二部では、時代が変わり、オマルのルバイヤートに魅せられたアメリカ人ベンジャミン君が、ペルシア(イラン)の立憲革命に首を突っ込むことになるのですが、ここから、物語はあんまり面白くなくなっていきます。
 オリエンタルの情緒は過去のものとなり、世界情勢がややこしい時代。その辺の知識が自分に乏しく、本書もジックリ詳しく歴史を解説してくれているワケではないのが原因かなあ。
 ただ、日本のことも、チラッとだけ会話の中にでてきます。
 生まれたばかりのペルシア議会が英露からの無茶な要求を受けてニッチもサッチも行かなくなった時に「ミカドにペルシア王位を譲ってはどうか」・・・・・なんやそれ!日露戦争から数年後のことなんだと年表を見るのですが、もちろん本気でそんな打診があったはずもなく、日本帝国軍がペルシアの保護に派遣されるなんてこともなく、結局芽生え始めたペルシアの近代化は列強の圧力によって潰されてしまったわけです。
 現代にまで続く、中東の混乱。ISを始めとしてイスラム過激派が異様に幅を利かせている昨今なものだから、「元祖イスラム過激派」たるアラムートを取り上げた本書を読んでみたのですが。
 ムスリムのみなさんより、ロシアをはじめとする西洋列強の方がやることエグイ。
 西洋人たちに踏みつけにされてきた歴史が、彼らにはある。
 一方、そんなシガラミの無い日本には、軍隊を派遣するのはアレですが、でもなんか力になれないものか、などと思ったりしました。