「首里の馬」2020/12/23 23:10

最初の数ページを読み進めるのに難儀する。たまにある、登場人物が登場せずに土地の説明文が長く続くパターン。しかしこういう長い解説はたいてい、作品の性質に意味があってのことなので、読み飛ばせない。今年の上半期の芥川受賞作品。
ヒロインの未名子さんは、沖縄在住、私設郷土資料館の資料整理を手伝い、世界各地の孤独な人たちにクイズを出すという、ケッタイなお仕事をしている。
これは情報・知識のお話だと思いました。情報は失われてしまえばそれまで、でも何かとつなぎ合わせれば、別の意味が生まれてくる。
得体の知れない、という状態を、多くの人は無条件に恐れ敬遠してしまう。孤独が無理解から生じるものならば、確かな知識によってその冷たさは緩和されるものなのだ。
……突然現れた琉球馬と上手くやって行く様子は、ちょっとやりすぎな気もしたけど、そのくらいの強引さも、小説ならアリなのかもしれない。沖縄の歴史の辛さとバランスをとるための楽観的展開なんだろうか。
同時に芥川賞受賞した「破局」でも思ったけど、複数の登場人物たちが長く一人語りをするシーンが何度かある。会話のやりとりとか相槌なんかも相手に求めているのかいないのか。ああいう形が昨今の小説の流行なんだろうか。ドラマとか映画とかではなかなかできないよなあ、長台詞すぎて。