「神の守人」2010/06/16 00:05

 深い恨みや憎しみを持った者が、強大な力を手に入れたとき……。
 女用心棒・バルサのシリーズで、初の前後編。恐ろしい神の力を宿してしまった少女・アスラが、国の変革を企む女呪術師や差別されてきた一族によって祭り上げられようとされていた、その計画の中に飛び込んでいってしまったバルサ。
 バルサ自身、子供の頃から命を狙われ続け、恨みを晴らそうとして力をつけてきた過去がありますから、アスラを無償で助けようとし、その力で人を殺めることを阻止しようとする姿に悲しい説得力があります。
 第一作の「精霊の守人」ほどのインパクトはありませんが、やはりバルサは格好いいです。アラサー女性のたくましさ。「老獪な獣」にたとえられていますが、前半の、追っ手を逃れて、戦うあたりは本当に、強くてしたたかで、優しいのです。
 しかし、後半では、敵である「猟犬」のシハナが印象的でした。賢く、強く、そしてカリスマ性を持つ女性で、彼女の考えはある面では筋が通っているのですが、冷たい。目的のためなら非情に徹するところが、同じ強い女性であっても(このシリーズって本当に、女性が強いです)、バルサとは違うのです。
 王国の建国神話とか北部と南部の経済格差とか他国からの侵略の気配とか、けっこう複雑な設定が絡んでくるのですが、そこは児童文学ですので、実に分かりやすく書いてくれています。
設定オタクも満足です。

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