「Y」2016/03/20 15:30

佐藤正午作品は、「ジャンプ」以来。「なんか湿っぽい文体のサスペンス小説」「サスペンス風味の恋愛小説」って印象だったのですが、今回読んだのは「湿っぽい文体のサスペンス要素もあるSF」でした。
タイムスリップもの。タイトルは枝分かれした別の道を意味する。
偶然ですが「僕だけがいない街」の放送がちょうど佳境になってる頃に読んでいました。18年の時を越えるのは同じでも、29才から小5ではなく43才が25才に戻る話で、誘拐殺人じゃなく列車事故から女の子を救う目的なので犯人探しとかのスリルはありません。
……なんか、読みながらいちいち「僕だけが」と比べてしまう。時間さかのぼり現象を映画用語で「アイリスイン・アイリスアウト」と呼ぶのをついつい「再上映」と脳内訳してしまったり。
Yの分岐点からのビフォーとアフターがどうなっているのか、徐々に明かされていく構成。
ノリが湿っぽいのは、43才の男たちが現実に倦んで、くたびれているから。
主人公の一方は、1980年に事故にあった、確かに可哀想だけどロクに話したこともない女を救うために1998年での妻も子もおいて時間を飛ぶことを望む……これがまず共感しづらい。
もう一方の主人公は運命が変わったために余計な出会いが待ち受け、結婚に失敗してしまうという……
ビフォーとアフターの関連性を「縁」としているのもコジツケたみたいで、あんまりパッとしない。
比較対象が良すぎて、作品レベルに求めるものが不当に高くなってしまった気もします。