「恋」2013/12/18 10:31

 原作は小池真理子の直木賞受賞小説。
 TVドラマでも、ヘタな映画顔負けに意欲的で刺激的で美意識のある作品って、けっこうあります。
 メイン四人のキャスティングがハマりすぎでした。影のある英文学者、奔放で華やかなお嬢育ちの奥さん、地味系で一途な女子学生。その三人の奇妙な関係の中に、軽井沢で出会ったワイルド系の男が現れて、事件が起こる。
時代は70年代。恋愛ものではありますが、軽井沢とか高級レストランとか煌びやかなセレブ設定と、倒錯的な愛の形が、非現実的な空気を醸し出します。
 石原さとみの、干からびていく蛾をみつめる風情がゾクゾクします。最近ではこういうの、やんでれっていうんでしょうか。
ワイングラスに舞い込む桜の花弁
薔薇の表紙の洋書
誘蛾灯の蒼いひかり
十五年後に薫り高い実をつける苗
重たげに弾丸を飲み込む猟銃
・・・作品を彩る小道具も完璧でした。
作品世界を盛り上げる洋楽も、とってもオシャレ。

「八重の桜」2013/05/26 23:47

 今年の大河ドラマは、思ったよりイイです。
 これまでは、京都が舞台になると大河ドラマ、会津が舞台になると朝の連ドラって感じで、この二元構成が効いていると思います。歴史の大きな流れと、一般の人たちの日々の営みの対比が。
 やがて、その両者が合流する。その運命が徐々に、盛り上がります。
 ただ、その盛り上げ方が、悲壮感に溢れてるんですよねー。最初の頃から「会津やばいよ」って空気に満ち溢れていて。
 で、実際歴史を見れば、まさにその通り。明治時代の始まりは会津の悲惨な状況の幕開けで。ドラマ制作スタッフはホントに真面目に忠実に会津の歴史に向き合っているなあって思うのですが。
 ・・・・会津の人たちは幕末から明治にかけて凄いビンボウクジひいて、平成の世でも福島は原発事故で酷い目に合っているのだと思うと、なんだか、いたたまれないような気持ちになってきます。
 福島応援の意味も込めて、会津出身者を描く大河ドラマにしたのでしょうが・・・・主人公の年表見ると、彼女の本番は京都に移って来てからって感じもします。
よってたかって会津がめった打ちにされる歴史ドラマを、地元の方々は、どのような思いで視聴されているのでしょうか・・・・

「たまこまーけっと」と「夜行観覧車」2013/01/26 00:00

 どちらもご近所づきあいを軸に、自分の家と地域コミュニティを大切にする気持ちが描かれているのですが。
 一方は、ヒロインは女子高生で、賑やか商店街を舞台にしたほのぼのファンタジックコメディなオリジナルアニメで。
 一方は、湊かなえ原作のサスペンスで、高級住宅街にお住いなセレブな主婦たちのドロドロと気持ち悪い姿を描くドラマで。
録画して続けて視聴すると、同じ現代日本を舞台にしているとはとても思えない落差があってなんか笑えてきます。
ちょっと、クセになりそう。

「平清盛」2012/03/17 00:17

 明後日の小川洋子のラジオでも、西行を取り上げてくれるし。
 もうちょっと引っ張って、桜の散るころに出家してくれても良かったんやけど。

 大河ドラマです。視聴率はあんまりよくないのかな?
 私も最初は、清盛があんまりアホな感じなんで、昨年の我儘ヒロインを思い出してちょっと不安だったんですが、それもまあ、マシになってきて。
 文武両道のイケメンと、ずいぶん高評価な設定になってる西行の美学とか。
 新選組の鬼副長がオジャルな感じのお公家さんになってるのに笑いが止まらなかったり。
 どう見ても清盛よりその家臣の方が貫録あるんだけど、上川隆也じゃしょうがないか(いや、今はまだ若いけどそのうち主人公も風格を身に着けてもらわなきゃだけど)とか思ったり。
 結構楽しくドラマを視聴しています。
 中でも素敵なのが、三上博史演じる鳥羽上皇の、愛憎入り乱れて病んだ人間性でしょうか。
 悲劇を負った人物としては崇徳帝にほうがメジャーなはずが、三上博史の悲痛な演技力と存在感に押されてサッパリと印象薄いです(笑)。
 もちろん、待賢門院タマコさんの、異様なキャラクターも光っています。ああいう女にマジになってしまったら、男たちはああなるんだなあ。と、納得。その男が国のトップに立つ人物だと、社会が転変するのだなあ。
 今のところ、野心満々な武家の皆さんよりも、醜く乱れて衰退していく貴族社会にスポットを当てていて、それがなんか新鮮なんですよね、大河ドラマっぽくなくて。
 日曜の夜八時台にそんなドロドロっぷりを放送してくるのってチャレンジャーですねえ。
 平安時代の最後の華が、咲き誇ります。

「3月11日のマーラー」2012/03/11 22:51

 音楽番組かと思ったら、ドキュメント番組でした。

 昨年のあの日に、東京はスカイビルの足元で行われた新日本フィルのコンサート。
 何千人も収容可能なホールに、お客さんは100人足らず。
 電車が止まってしまって、何時間も歩いてきた観客。走ってきた演奏者。
 この国に異様な事態が起こっている。
 それは誰もがわかっていて、家族や友人の安否が気がかりだった人も居たことでしょう。
 それでも、コンサートは開かれました。
 指揮者のダニエル・ハーティングさんはイギリス出身。人生初地震があの揺れ。
 しかし、この人はいいことを言いました。
 みんなが不安になっている。そんな時に大切なのは一人にならないこと。自分が一人だと思わないこと。コンサートを開けば、自分も、楽団員も、観客も、共にいることを感じられる。
 曲は、マーラーの交響曲第5番。重苦しい葬式から始まって、最後に明るい希望を見出す。
 異様な緊張感の中で、奇跡的な演奏が行われた(らしい。演奏自体は放送部分的にしか放送されなかった)。
 震災直後のN響の海外公演も、TVの画面越しで聞いただけで、ものすごく迫ってくるものがありました。これも、演奏者は異国にいながら日本の様子が気にならないわけがなく、観客の皆さんも報道によって全員日本の惨状を知っているだけに、尋常でない注目度の中での演奏でした。
 音楽というやつは、人間のメンタルがこんなにも純粋に表れてくるものなのか……

「忍たま乱太郎 忍術学園全員出動!の段」2012/01/03 11:41

 保健委員からの、お知らせでーす!

 すっごい、癒されました。
 結構な長寿アニメの、昨年公開された劇場版。
 正直言って、「こんなにいっぱい忍たまおるん!」てくらい、知らない登場人物いっぱいなのですが。先生や、上級生のみなさん。それでも、彼らがみんな愉快で気の良い連中だってことがちゃんと分かります。
 オイシイなあ、将来有望そうな先輩がた。
 チョーク入れや出席簿で敵忍者と戦ったり、基本ギャグアニメなのに、時代考証しっかりしてるのも忍たまの特徴。
 今回は、戦や、あくどい殿様たちから村の平和を守るため、忍術学園が総出で抵抗戦をするお話。
 村の防備を固める準備をする様子がまた、本格的で。子供向けだからって、決してナメた制作をしていないんですよね。
 懐かしさと新鮮さと。とても、楽しめました。

「ピエロ」2012/01/02 13:35

残念だったのが、いかにも強敵っぽかった元自衛官さんに、もうひと踏ん張りしてほしかったかなあ。最初の警官殺しも、理由がショボカッタ。
 正月恒例の、「相棒スペシャル」です。
 今シーズンは、けっこう良作が多くてハズレがなかったので、期待していました。
 相棒らしくって、良かったですね。二時間半、飽きずに楽しめました。
 右京さんの強引な推理に違法な捜査(それがドンピシャで当たる!)。
 上の方で縄張り争いしている一方で、現場捜査員が熱く事件に立ち向かい。
 年末の最重要行事、餅つき。
 正月から仲良くお稽古なお二人。
 そして、社会派ネタとして、格差社会を。
 また、相棒では珍しく、主要人物が撃たれて負傷という物騒なコトが生じ、犯人グループの危なさを浮き彫りにして、緊迫感出ました。
 敵の手強さが、またヨカッタ。よく考えられた作戦。「善意って怖いよねー」と、見ず知らずの人々が書き込むネットから情報収集。ホント、誰に何を見られて書き込まれてんのか分からない現代って、怖い。
 そんな相手と、右京さんとの知恵比べ(勝つのは右京さんに決まっているのですが)。

「謎解きはディナーの後で」2011/12/26 22:37

 失礼ながら、本屋大賞受賞でありながら、この程度でございますか?

 なんてことを、言いたくもなる。
 ホントに、全国の書店員さんが「みんなに読んでもらいたい」ってお勧めしてるんですか?
 原作は読んでいないので、TVドラマしか知らんのですが。
 同じ作者の、別の作品のラジオドラマ版を聴いて、コメディとしてもミステリとしても、センスいまいちやなーって思っていて。
 物語としても、なんか、こう、キャラクターのワザトラシイ狙い方が、痛くて。
 ドラマ版は、原作よりも漫画チックにコメディ色強くしているんでしょうねえ。それで正解でしょう。開き直って弾けるしかないよなー。
 しかし、お嬢様は全然お嬢様っぽくないし、執事はあの程度で毒舌キャラとは片腹痛い。世の中にはもっと強烈な執事キャラはいるでしょうに。
 御曹司警部役を、痛々しくも楽しげに演じてらっしゃる椎名桔平さんは、さすがだなー、と感心しながらぽつぽつドラマ見てましたが、最終回は見てないや(どうせクダラナイおちだと思って)。

「マメシバ一郎」2011/12/18 23:14

 実家へ行き、父の畑から、青梗菜やらレタスやらを頂いていく。
 シーズン最終な小菊や、赤いピアカンサスも。

 前作「幼獣マメシバ」で、脱・ヒキコモリを果たした二郎ちゃんが、もう少しだけ成長して、「責任をもつ」っていうのを意識し、「働いてみようか」と考え出すまでのお話。
 ストーリーとしては、「幼獣」が非常によく練られていたのに対し、今回は甘かったかなあ。二郎ちゃんがあんまりオタオタしないでいるのが物足りない……性格悪くてキモいのが特徴やったのに。ちょっと、成長の仕方が簡単に思えて。
 その代わり、動物たちが増加して、彼らの愛らしさで番組を引っ張っている。
 いやー、可愛らしい。
 人間の方の新レギュラー、美波も結構好きなんです。「下流の宴」ではガッツあふれる女の子を演じてくれましたが、表情が元気いっぱいで魅力的なんですよね。
 全国ロードショーの映画もやるそうですが。ドラマの第三弾も、制作されるかな?

「火車」2011/11/08 10:59

 ギリシャの債務問題、返せない金を借りちゃうのはもちろん問題なんですが、返せないほど金を貸すのもどうなのかって意見もあります。
 しばらく前のサブプライムローンなんかもそうですね。貸す方も借りる方も、ご利用は計画的に……
 欧州だけでなくって、日本もね。

 言わずと知れた、超有名ミステリ小説。これ読んでから結構長い間、通販やアンケートとかに住所氏名記入するのに抵抗を感じたものです。実は今でも、ネット通販とかでクレジットカードの番号入力するのは、ためらわれます。
 こないだTVドラマで放送されていたので、懐かしくって録画しちゃった。
 原作読んだときは、女性二人のインパクトが強くって、探偵役の刑事の方の印象はほとんど残ってないのですが、上川隆也を起用するだけあって、ドラマではちゃんと目立っていましたね。最後は、彼が刑事としての本分を取り戻すって形になっていましたし。
 つらくても、しんどくても。自分の大事なものを、捨てることができるのか。
 なのに、私の好きなエピソード(自分を捨てて他人として生きようとした女が、指輪の石は本当の自分の誕生石を強く望んだ)が、ドラマでは削られちゃったなあ。
 子供とか犬とか、校庭を掘り返すとかはわりとどうでも良かったったっていうか。
 美人女優に一言もセリフを喋らせなかったのは、原作へのリスペクトでしょう。しかし、墓参りを口実に人に会うのに、あんな派手な格好はないと思うんですよね、ラスト。
 まあ、小説を映像化するにあたって、そのまんま同じものを作ってもアレですしね。アレンジするなら、いっそ、演技派大物女優使って喬子さんを主人公にして、彼女の希望と絶望を前面に出したやつを、誰か作ってくれないかな。